
漂着し、漂着した油の回収に延べ約10,000名の人員により約40日間の作業日数を費やした。
更に、今年1月、日本海で発生したタンカー「ナホトカ」号沈没事故においても、冬期の日本海という極めて厳しい気象海象条件等のため油防除は困難を極め、ムース化した大量のC重油が日本海沿岸各地に広範囲に漂着するという大災害となったところである。
(2)焼却処理法と他の処理法の技術面からの比較
ムース化油を焼却処理する方法を現有の他の処理方法と比較してみた場合、技術的な面で次のような比較ができる。
?海域の現状復帰の面からは各種資機材を利用した回収処理が最適であるが、気象海象条件により制約を受け効率的回収が困難な場合が多いほか、回収油の輸送及び陸上における最終処分のプロセスが必要となる。
一方、焼却処理手法による場合は、現場での最終処理が可能であるという大きな利点があるほか、処理に要する資機材は簡便なものでかつ少ない人数で作業可能であり、処理日数も大幅に短縮可能と見込まれる。
?分散処理は、自然分散あるいは油処理剤を使用し油分を海域へ分散させ、水生生物による摂取あるいは自然浄化作用に委ねる方法であるが、ムース化油では必ずしも有効ではなく、処理後においても長期間に亘り、生態系への影響評価・監視が必要である。
焼却処理手法による場合は、制御された状態で安全にムース化した油を燃焼させる方法であり、油分の大半は焼却処理されることから、処理時間が短く海域への影響はほとんどなく、最後に少量の燃焼残渣を回収処理することで防除作業は完了する。
ムース化油を焼却処理する際に使用する処理薬剤についても、生態系への影響がほとんど考えられないことは前章で述べたとおりである。
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